CATEGORY:

UTAU,作曲,花蘭るな

【UTAU音源配布オリジナル曲】Luna Calante【花蘭るな】

■□■□■ 概要 ■□■□■

UTAU音源「花蘭るな」の音源配布動画。
月が欠けるように、いつかそのときは来る。
★3rd albam『Luna Calante』収録曲(4曲目)★

 

■□■□■ 動画 ■□■□■

 

■□■□■ その他配布物 ■□■□■

オフボーカル音源(ハモりなし)
オフボーカル音源(ハモりあり)
ベタ打ちust

 

■□■□■ 構成 ■□■□■

(capo) intro ->
(1) A -> A’ -> B -> S -> A -> A’ ->
(2) C -> D -> 間奏(A”) ->
(3) A’ -> B -> S -> A”’ ->
(coda) outro

 

■□■□■ 歌詞 ■□■□■

Luna Calante
 作詞・作曲:りと456

夜に溶けていく ルナカランテ
声は届かない 遠くになんて

息をこぼす月 光なくす
闇に潜んでる うさぎのワルツ

遠く 遠く 遠くに
誘われても 行かないでと
意味も知れない心で
そっと こぼした

まだ行かないでね
そばにいつづけて
夢見心地のオルキデ
目をそらした

 
交わぬ世界線 裏と表
近く感じても 届かぬこの手

闇に溶けて ゆく ルナカランテ
別れの言葉も 言えないなんて

ただ 近くにいたくて
近くにいなくて
泣き出すとは思わなかったの?

どうして 消えてゆくの
見て あともう少しで
渡せたのに 眠るの?

 
語りかけましょう 歌うように
きっと届くでしょ? そばにいるから

混ざらない響きが 長く伸びて
袖を引いて
不安な音が止んだら
そっと 旅立つ

もう行ってしまうの?
そばにいれないの?
意味を少しだけ知った
嫌なことだけ

 
ここからは見えない ルナヌオーヴァ
月を連れてゆく うさぎのワルツ
明日からはもう
会えないのかな・・・

 

■□■□■ ストーリー ■□■□■

※注意※
3rdアルバム『Luna Calante』(CD)等でのネタバレを含みます!

 
夜空に月が浮かぶ。
日に日に欠けていく下限の月は、まるで闇夜に吸い込まれて消えてしまうような不安を駆り立てる。

3月18日、今季最後になるであろう雪の日。
黒い衣装に身を包んだ人々の中、最近になって一緒に住みだした女性の手を引きながら、少女は黒い車をただ見つめていた。
白い息を漏らしながら、彼女は少しずつ理解してきていた。
父がもう手の届かないところに行ってしまうのだということを。

去った車の場所には、『あちら側』のうさぎが、後ろ向きに跳ね回っていた。

 
時は2週間ほど前にさかのぼる。

 
なんでそんなひどいこと言うの?と、少女は思った。
彼女は「この世のものではないもの」を見ることができる。
そんな彼女の親友の一人に、手足のないゆうれいの女の子がいた。
その彼女に言われた言葉がとてもショックだったのだ。

彼女は少女が最近居候している家にもともと住んでいた。
少女がこの家に住みだして3ヶ月ほど経つ今、少女にとってそのゆうれいは大の仲良し。親友だった。

「聞こえなかったみたいだからもう一度言うわね。
 あなたのお父さんは、たぶんもうすぐ死ぬの。
 ここじゃないどこか遠くへ行ってしまう。」
淡々とした口調で、親友が再度告げる。
「もう、話すこと、できないね。ずっと。」

何度言われても、幼い少女は信じることができなかった。
というよりも、言葉の意味をしっかりと理解できていなかったのだろう。
それでも、
「お父さんは遠くへ行ってしまうから、もう話すことができない」
と言われたことだけは理解できたので、彼女は親友に酷いことを言われたと思い、目に涙を蓄えながら、「違うもん!」と叫んだ。
そしてそのまま、泣いてしまう顔を見られたくなくて、走って家の外へ飛び出していった。

なんで・・・?お父さんはずっと一緒にいるもん・・・!

走りながらそんなことを考え、彼女は小さく「行かないでよ」と呟いた。
本当は、親友の言うことが真実であると、頭のどこかで理解していたのかもしれない。

それでも彼女は、信じようとはしなかった。

 
それから数日して、居候先の主人唄音ウタが、少女に彼女の父が重い病気であることを話した。
少女はウタの表情を見て、ようやく、父親が本当にいなくなってしまうのかもしれないと感じ始めた。
「どうやったら、お父さん、よくなる?」
と、彼女はその不安を無くしたくて、ウタに真剣な眼差しを向けながら聞いた。
自分が今父親のためにできることをやりたかったのだ。
ウタは静かに言った。
「そうだね。どれだけ力になるかわからないけど、千羽鶴っていうのを、一緒に作ろうか。」
微笑む口元とは裏腹に、ウタの目はどこか悲しげに見えた。

 
・・・

 
3月17日。
その日は、冬がぶり返してきたかのように一段と寒い日だった。
少女が家で鶴を折っていると、もう一人の同居人である重音テトが、勢いよく家のドアを開けて帰ってきた。
「るなちゃん!!病院に行くよ!!急いで!!」
これまで見たことのない形相に驚いた少女は、少し泣きそうになる不安を抑えながら、差し出された手をとり、外へと出かけた。

出かける途中で、白いウサギの影が見えた気がしたが、ひと目見て『この世のものではない』と感じたるなは、気づかないふりをした。
うさぎは後ろ向きに跳ねながら、彼女たちと同じ方向へ移動しているようだった。

病院に着き、テトが病室の扉を開けようと取っ手に手を伸ばそうとすると、その前に扉がひとりでに開いた。
出てきたのは俯いたウタ。
「終わったよ。」
彼女は、小さく、息を漏らすように言った。

テトの目が見開いて、驚きと悲しみの混じった表情へと変わった。
「そんな・・・」
口から漏れた言葉。それに答えるように、ウタが言葉を返した。
「るなちゃんを・・・頼むって・・・最期に・・・」
二人の会話を聞いても、よく状況が掴めていないるなは、繋いだテトの左手が強く握り締められるのを感じ、彼女の顔を覗き込んだ。

「どうぞ。入ってください。」

部屋の扉の前で話していた3人に向けて、中から医者の男性が声をかけた。
呼びかけに応えて3人が中に入ると、喉にチューブを取り付けられたるなの父親がベッドに寝ていた。
「そちらの子どもは、彼の娘さんですか?」
「はい。義理の娘になります。」
医者の質問にウタが答える。
テトはるなの父親の方をじっと眺めていた。
「ごめん・・・」
突然、テトがつぶやき、そのまましゃがむと、るなの体を抱き寄せた。
「ごめんね・・・るなちゃん・・・ごめんね・・・」
あふれる涙を何とか抑えようとする声が、小さく病室に響いた。
状況がつかめないるなは、「お父さん、どうしちゃったの?」と聞いた。
その声に反応するように、ついにテトが声を上げて泣き出す。
彼女には分からなかった。こんなに幼くして、独りきりになってしまった少女にかけるべき言葉が。
彼女は『あの時』自分が何を言って欲しかったのかを必死で思い出そうとしたが、ただただ芽生えた悲しみが膨らむばかりだった。
その後、ごめんねと謝り続けるテトが落ち着くのを待ち、ウタが「お父さんがお空へ行ってしまった」ことをるなに説明した。
彼女もまた、自分が少女を預かってから、一度も病院に連れて行かなかったことを後悔していた。

「もう、お父さん、起きないの・・・?」
少しだけ理解した少女が、震えた消えそうな声でウタに聞いていた。
ウタはハッキリとそれに答える勇気を持てなかった。

 
・・・

 
3月18日。
ウタの家の近くで、るなの父親の葬儀が開かれた。
駆けつけたのは親族ではなく、父親が働く炭鉱の職員や、親友ばかり。
彼には他に親族がいなかったのだ。
るなも幼いころに孤児院から引き取った養子で、彼には妻さえもいなかった。

葬儀中、るなはわけもわからず、でも、とてつもない不安を感じて、ひと時もテトから離れようとしなかった。
近くには幽霊の親友ササグもいたが、彼女と話したい気分にはどうしてもなれなかった。

「大丈夫だよ。お父さんがいなくなっても、るなちゃんは『こちら側』が見えるでしょ?」
葬儀場の前室でテトにくっついて離れないるなに、ササグが珍しく彼女を慰めるような言葉をかけた。
「お父さんは死んじゃったけど、どこかで会えるかもしれないよ。」
聞きながら返事をせずに、るなは、『あちら側』の住人達に触れた記憶がないことを思い出していた。

おとうさん、るなにしんぱいしてほしくないって、おしえてくれなかったって…きいた…
るなは、もっと、さいごまで、おとうさんのちかくにいたかったな…

白い箱に入れられた父親の顔を覗き込みながら、少女は頭の中で彼に話しかけていた。

 
式が終わり、父親の棺が黒い車へと運ばれて行く。
悲しみを打ち消そうと、車から不協和音が鳴らされる。
少女はその音を聞きながら、ただぼーっと車のある方向を見ていた。
遠くなっていくその黒い車の、さらにその先を。
少女は、テトと繋いでいた手を離すと、言いようのない不安を紛らわすかのように、彼女の袖をぎゅっと引いた。

もう。そばにはいれないんだ。

幼いながらに、少女はそのことを理解した。

ふと、少女はあることに気づいた。
去った車のあった場所に、さっき見た『あちら側』のうさぎが踊るように回っている。
こういう不気味な光景を見せる『あちら側』の住人たちを、少女は本能的に避けてきていた。
しかし、この日は違った。
ぼーっとしていた目線は、そのうさぎたちに釘付けになってしまった。
じっと見ていると、うさぎの一匹がこちらに眼を合わせて立ち止まった。
少女がその一匹をジッと見つめると、そのうさぎは少女に向かって「前向きに」飛び跳ねた。
この世界ではいたって普通の出来事。
しかし、少女は不思議と、自分の鼓動が早まるのを感じた。
飛び跳ねた直後うさぎは消え、少女はまた、元の「どこでもない場所」を見続けた。

新月の夜。
月のない闇夜で、少女の瞳が暗く暗く沈んでいくのに、ササグだけが気づいていた。

 

 
— Luna Calante —